安定板
予想を難しくする要因のひとつ「安定板」
通説は「イン有利・まくり減少」となっていますが、あくまでも「風速が同程度」の場合。
安定板が付くような風速6m以上よりも無風〜2m程度の方が当然インは強く、足への影響や風を加味した予想が必要です。
また、安定板使用時の1号艇回収率は低下する傾向があるのも抑えておきたいポイント。
この記事では実際のデータを元に安定板の影響をまとめています。
安定板とは
安定板
安定板とはモーターの接水部分に取り付けられるU時型の板。
艇を安定される目的に、荒天時や波が高い時に装着されます。
そのレースに出走する全員が装着し、出走表に記載されます。
強烈に水面が荒れている時は周回短縮(3周→2周)になることも。
安定板の効果
接水面積が大きくなることで、事故を防ぐ効果があります。
- 舟の先端が浮き上がるのを抑える
- スピードが落ちて乗りやすくなる
安定板の影響
足への影響
ボートレース公式サイトでは「イン有利」と記載されています。
荒天時や波が高いときに装着される。
安定板はモーターの下部に取り付けられるU字型の板で、取り付けることによってボートの安定を図るのが最大の目的。
装着するとトップスピードが落ち、まくり切るのが難しいためにインが有利といわれている。ボートレースオフィシャルサイトより引用
公式Youtubeでは「接水面積が大きくなり抵抗が増えるため、伸びが落ちる場合がある。そうなるとインコースが強くなる」と元選手の秋山基裕さんが解説されています。
選手コメントでも「伸び」の言及が多め。
ボートレース公式サイトより引用
ボートレース公式サイトより引用
ただし、影響がないケースや、稀にむしろ伸びが良くなるということも。
ボートレース公式サイトより引用
安定板が付くと抵抗が増えて回転が落ちますが、元々のモーター素性や選手の回転調整の技術、選手の求める足によって影響が変わってくるのが難しいところ。
伸び以外にも、ピット離れ・出足・行き足などケースバイケースです。
ボートレース公式サイトより引用
毒島選手のnoteでは「遅いボートに乗ってる感じ」と表現されています。
また、安定板時の回転調整はチルトを跳ねる選手が多く、一概に伸びる訳ではないので注意!
ボートレース公式サイトより引用
厄介なのが、天候が急変して急に安定板装着となる場合。
選手の調整が間に合わない可能性もあります。
逆に、水面が落ち着いていても装着したままレースすることもあり、データ数は少ないもののイン逃げ率が高くなっています。
ボートレース公式サイトより引用
通常なら周回展示やタイムから判断できることもありますが、水面が荒れていると慎重にターンしたり、展示タイムを計測するバック側でかぶる(直線を走る時の姿勢)ことも少なくなります。
スタート展示はそこまで変わらないので、起こし・行き足・伸びを判断しつつ、選手コメントも確認するのがベストですね。
安定板装着時はピット離れや伸びに特化する選手は注意!
ピット離れタイプの石川真二選手や、伸びを付ける下出選手も安定板の有無で調整を変えています。
ボートレース公式サイトより引用
ボートレース公式サイトより引用
風の影響
安定板が装着されるのは風速5~6mを超えたあたりからが多く、風を考慮した予想が必要です。
公開されている水面気象情報として「波高」もあります。
これは測定方法の違いなのか、江戸川は「5cm刻み」など競艇場によって基準が異なっています。
基本的には風とリンクしているので、無視しても問題ありません。
例えば桐生の安定板レースの多くは「追い風(スタートラインに対して平行 or スタンド側からの斜め追い風)」
風速が強まるにつれてイン1着率が低下していますが、安定板が付くことが多い風速6mではやや上昇しています。
安定板が付いたり付かなかったりする「風速5m」で比較。
他の競艇場でも基本的にイン1着率が上昇し、「風速が同程度なら安定板が付いた方がインが強い」傾向があります。
コース | 安定板あり | 安定板なし |
---|---|---|
1 | 57.7 | 42.8 |
2 | 13.0 | 15.9 |
3 | 9.8 | 17.4 |
4 | 12.2 | 11.7 |
5 | 5.7 | 8.7 |
6 | 1.6 | 3.4 |
決まり手を見ると、安定板時は「まくり」率が低下。
ダッシュに影響することが多く、他場でも同じような傾向です。
決まり手 | 安定板あり | 安定板なし |
---|---|---|
逃げ | 51.2 | 49.6 |
まくり | 14.6 | 22.8 |
差し | 10.6 | 4.9 |
まくり差し | 11.4 | 14.6 |
抜き | 12.2 | 7.3 |
風向き
安定板時に限った話ではないですが、風向きもかなり重要です。
- 先マイしたインが風に流されて差されやすくなる
流れることを警戒して落として回ると捲られやすくなる - 握って攻める艇も流れやすくなり、マーク差しが増加
出足に注目 - 風に押されてスタートが早くなるため、慎重になることもある
- 向かい風と比較するとスロー勢はスタート時に起こしやすく、伸び返しやすい
- ターン時に風の抵抗を受けてサイドが掛かりやすく、艇が流れにくい
思い切って回れるため「まくり」率が上昇 - スロー勢は起こしからの加速に影響し、スタートが難しくなるケースもある
出足・行き足劣勢のモーターだとスタートが届かない - ダッシュ勢の行き足~伸びに注目
- スリットが揃ってしまえばインが押し切る確率が高め
「スタート」だけを見ても強風時は勘が狂いやすく、追い風で届きすぎて大幅にアジャストしたり、向かい風で起こし時に艇が煽られてドカ遅れなど、イレギュラーが起こりやすくなります。
「1マーク」でも握った艇が飛んだり、外から良い角度で差しに入っても内がバタついてスペースが無いパターンなど、荒れると言うかゴチャつくレースも増える印象です。
不確実性が高くなるのは間違いないので、的中を重視するなら手を出さない選択もアリですね。
一方、強風かつモーター劣勢のインでも人気を集めていたりとオッズが歪みやすくなる面も。
「オッズ」という集合知に勝つのはなかなか難しいですが、回収率を重視するなら狙えるレースも多いと思います。
荒れ水面巧者
「(水面が荒れている時は)ようは握れるか握れないかの問題になってくるし、波に乗れるか乗れないかの問題になる」と石川真二選手が自身のチャンネルで安定板の影響を解説されています。
※安定板については「6:40」あたりから
2022年の第6回レディースオールスター(桐生)優勝戦がまさにそのようなレース。
「安定板装着・周回短縮」条件で、直前の水面情報はスタンド側から斜めの追い風8mです。
ボートレース公式サイトより引用
結果はカド4号艇の守屋美穂選手がトップスタートから一撃まくり「4ー6ー1」
ボートレース公式サイトより引用
配当は「¥35,130」
「追い風+安定板」とまくり切るには不利な条件で、エンジンも出足〜行き足タイプ。
4アタマなら可能性が高いのは最内差しか、スリット先行できればまくり差しての「4-1」と予想するのが普通かと思います。
2か3が握ってインが張って流れるなどの展開になっても、インの節イチエンジンに賭けて「4-全ー1(合成オッズ37.7倍)」もオッズ的には面白いですが、まくり切るとは考えにくいレース。
スタートを踏み込む「度胸」や荒れ水面で握る「気合」のようなハートの部分も大事ですね。
荒れ水面巧者
巧者で有名なのは北川幸典選手や「波乗り」の異名を持つ石渡鉄平選手・烏野賢太選手など。
記念レース常連選手は水面への対応力が高いですが、個人的には秋山直之選手・毒島誠選手・西山貴浩選手・茅原悠紀選手・桐生順平選手などや、女子だと日高逸子選手・寺田千恵選手・遠藤エミ選手。
通説ではベテラン選手や重量級選手が荒天に有利と言われることもあります。
ただし、「荒れ水面巧者」はデータとして表すのが難しい情報の一つ。
以前に「風速5m以上の勝率と風速2m以内の勝率差」の比較を試したことがありますが、データ数自体が少ないことや、エンジンの仕上がり、地元など複数の要因が絡みます。
誤差の大きいデータを使ったり、思い込み・先入観が入るとロクなことがないので、そのレース毎に判断するのがベストだと思います。
ボートレース公式サイトより引用
河川をコースにしているため、川の流れ・潮位・風の影響が大きい特殊水面・江戸川。
「波巧者=江戸川巧者」と言われることもあり、得意・不得意が出やすい競艇場です。
元選手で江戸川解説者の桑原淳一さんが「江戸川波乗り大賞」を決めていて、第1回は「桑島和宏選手」、第2回は「福来剛選手」
桑原先生が波乗り巧者を表彰する
🏆江戸川波乗り大賞🏆今回新たに #福来剛 選手が受賞しました👏👏✨
詳しい受賞理由は動画の「概要欄」に書かれていますので合わせてご覧ください😊https://t.co/yYnhhcrGAK pic.twitter.com/EKzyGMJBhj
— 【公式】BOAT RACE江戸川 (@03edogawa) July 15, 2022
江戸川は斡旋拒否している選手も多いらしく、走る回数が多い地元選手が強い傾向があります。
ベテランだと石渡鉄平選手や「スタート0.94」で最後尾から1着に追い上げた作間章選手など。
純地元で江戸川勝率が高い桑原将光選手や、伸びタイプの佐藤大佑選手、遠征勢だと平尾崇典選手も有名ですね。
オッズに注意
当たり前ですが、同じ安定板条件でもイン逃げが決まる日もあれば、荒れる日もあります。
安定板が付いていても風速6mを超えてくるとイン逃げが怪しくなるので、オッズに注意したいところ。
安定板レースの1号艇は回収率が低く推移しています。
競艇場 | 回収率 |
---|---|
桐生 | 68.1 |
江戸川 | 71.8 |
浜名湖 | 59.5 |
津 | 62.0 |
なると | 68.1 |
若松 | 73.9 |
もちろん選手や機力次第ですが、安定板使用でも強風時に3連単で10倍以下のオッズは過剰人気の可能性も。
こういった舟券で勝負する場合は点数を絞るか、かなり高い予想精度を持っていないと長期的に勝つのは厳しくなるはずです。
例えば上記左側11Rの結果は「1ー3ー2」で730円(オッズ7.3倍)
人気上位4点はインから相手が3号艇「1ー3ー245・1ー2ー3」
合成オッズを計算すると「1.98倍」なので、的中率50%以上は欲しいところ。
また、3号艇のまくり差し想定で「3ー1ー245」の3点を追加した場合は「合成オッズ1.72」で、回収率100%ラインは的中率58%程度。
「3ー1ー245」の3点勝負なら「合成オッズ12.72」で、的中率8%以上あれば回収率プラス域に入ってきます。
あくまでも理論値ですが、強風時のイン逃げは2・3着のマギレも起こりやすいため、オッズほど固いレースでは無いことも多々あります。
ここは準優勝戦なのでスタートが揃えば2着確保の外マイする可能性が高く、的中を狙うなら「1-3」になりますが、いかにも当たりそうなレースでもオッズに見合っているかが大事。
安いと思うならスルーするか、割が合ってると思える合成オッズまで点数を絞るのがオススメです。
安定板データ
安定板レースが多い場・少ない場
全国に24場ある競艇場の内、安定板の使用が特に多いのは江戸川・桐生・浜名湖・津・なると・若松。
次いで、戸田・平和島・下関・尼崎・丸亀あたり。
一場につき年間2200~2300レース開催されているうちの数%は安定板が付いている状況です。
江戸川は元からボートにミニ安定板が付いていて、更に大きな安定板を付けるシステムですが、年間で約20%を占めることも。
桐生は冬の季節風「赤城おろし」により、多い年は10%を超えるレースで安定板使用となります。
逆に、日本一の静水面と呼ばれる多摩川や、蒲郡・住之江などは安定板の使用はほとんどありません。
「うねり」で有名な福岡は昔は安定板自体が無かったり、潮の干満がある児島も少なくなっています。
実際の安定板データまとめ
大前提として、風速が強まるごとにインが弱くなるのが競艇のセオリー。
※「無風」は計測されていない場もあるので参考値
河川の流れがある江戸川や、2コースが利く追い風が多い浜名湖では逆転しているものの、基本的には同じ風速・風向きならば安定板が付いた方がイン有利の傾向です。
※データは約5年分で集計
競艇場 | 安定板あり | 安定板なし |
---|---|---|
桐生 | 57.7 | 42.8 |
津 | 57.0 | 54.2 |
なると | 46.7 | 42.0 |
若松 | 55.9 | 49.6 |
江戸川 | 41.3 | 46.3 |
浜名湖 | 41.5 | 47.5 |
安定板の影響で伸びが落ちるケースも多いため「まくり率」が低下しています。
風向きにもよりますが、特にダッシュに影響があります。
競艇場 | 安定板あり | 安定板なし |
---|---|---|
桐生 | 14.6 | 22.8 |
津 | 12.1 | 13.5 |
なると | 17.8 | 17.7 |
若松 | 13.8 | 17.2 |
江戸川 | 19.4 | 18.7 |
浜名湖 | 23.9 | 13.6 |
大まかには「(同程度の風速・風向きで)安定板はイン有利・まくり減少」の傾向ですが、各エンジンへの影響や競艇場の特性など複数の要因が絡むので難しい部分も。
例えば、同じ「風速6m・安定板使用」でも低気圧の塊である台風の影響でイン成績が低下したりと、「気温・気圧・湿度」の気象条件も影響してきます。
的中を重視するなら強風や安定板レースは不確実性が高くなるので、避けるのも良い選択だと思います。
的中率が下がることを許容してオッズ妙味を狙う場合も、ただの逆張りにならないように各種条件を考慮しておきたいところ。
安定板装着が多い競艇場は特徴記事に追記しているので、参考にしてください。